森博嗣さん作のS&Mシリーズ。
前作の「幻惑の死と使途」と平行して発生する事件を描いている本作。
「幻惑の死と使途」では複線として書かれていて、いつ出てくるんだろうと思いながら読み終わっていた内容がきっちり1つの物語として描かれていました。
幻惑の死と使途は奇数章しかなく、マジシャンの物語だからかな?と思っていたら、
この作品は全て偶数章です。
(各章の副題も"奇"と"偶"がついています。)
このあたりの遊び心が、いいです。
今回はいつも以上に、人の心の中の描写が多かったような気がします。
それは、登場人物の境遇に配慮したからでしょうか?
前回はイリュージョン、今回は詩的な印象を得ました。
日本人はイリュージョンも推理小説も解くために見る、アメリカ人はショーとしてみる。
この違いは大きいと思いますが、解くために見る人にはいい作品かもしれません。
なんちゃって文化人程度が作中抱いた違和感を信じて考えた仮説で、
ほぼトリック自体は合っていました。物事は複雑に見えてシンプルです。
さて、なんちゃって文化人的名言をひとつ
・人の名前に刻まれたものは、消えない
自分自身を変えることを自分自身が拒否をするという現象を経験する人はいると思います。
他人から見た自分も、第一印象から意識付けられてしまって、
しばらく経ってから再会したときにその人が変わっていても、
やっぱり前のイメージは簡単には消えない。第一印象って重要です。